【最新版】遺族厚生年金の見直し~5年間の有期給付~ -vol.6-

 

2025613日に、注目されていた年金関連法案が成立しました。

 

公的年金は、老後の収入の柱としての老齢年金だけでなく、遺族年金や障害年金という保障の面を持つ大切な社会保険制度の1つです。ただ、制度ができてから時間が経つと、世の中の環境とのズレも出てくるようになるため、制度の見直しは必要不可欠となります。

 

法律が成立した改正項目は、①被用者保険の適用拡大②在職老齢年金制度の見直し③遺族年金の見直し④標準報酬月額の上限の段階的引上げ⑤iDeCoの加入可能年齢の引上げ⑥将来の基礎年金の給付水準の底上げ⑦その他、と多岐にわたりますが、特に注目された「③遺族年金の見直し」についてご紹介します。

遺族年金制度の見直しの総論

「遺族年金」には、国民年金から支給される「遺族基礎年金」厚生年金から支給される「遺族厚生年金」がありますが、ここでは遺族厚生年金の見直しについてお伝えします。

 

現行制度では、30歳未満の子の無い妻は5年間の有期給付となる一方、30歳以上だと再婚または死亡するまで生涯受給できることになっています。なお、18歳未満の子どもがいる場合は年齢に関係なくずっと受給できます。

 

一方で、妻が無くなって夫が残された場合、妻死亡時の夫の年齢が55歳未満だと受給権が発生しないため、そもそも遺族厚生年金を受け取れません。また、55歳以上だとしても、実際に受け取れるのは60歳以降となっていて、夫が亡くなった場合の妻に比べてずいぶん限定されています。

 

そこで今回の改正で、こうした男女差を解消すると同時に、18歳未満の子どもがいない現役世代については、男女に関係なく原則5年間の有期給付に変更されました。


出典:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」より

ネット上では、この点について「これまでずっと受け取れていた遺族厚生年金が5年間だけしか受け取れなくなる」と批判される事態になりました。

 

5年間の有期給付の影響を受ける人

批判を受けている5年有期化ですが、考えてみたら、現行制度のおかしな部分(=不合理な差)が解消されているだけです。

 

確かに、これまで受け取れていた人が受け取れなくなる点は問題かもしれません。だからと言って合理的な理由が無い仕組みをそのまま残すことにも疑問が残ります。

 

そもそも、今回の改正でもこれまでと変わらない人は結構います。

遺族厚生年金「5年有期」制度の影響の有無

まず、18歳未満の子どもがいる場合は、これまでと同じです。

 

また、今すでに受け取っている人も変更ありません。しかも「5年有期となるのは、60歳未満で死別した場合」なので、配偶者との死別が60歳以降の場合、現行制度と同じく一生涯受け取れるままです。

 

2028年度に40歳以上になる女性も変更ありません。

 

ちなみに、18歳未満の子どもがいる場合、残された配偶者は子どもの人数に応じた遺族基礎年金と、遺族厚生年金を受け取れます。

 

今の制度では、子どもが高校を卒業する年度末になると遺族基礎年金の受け取りが終わって、遺族厚生年金だけをその後もずっと受け取れるのですが、今回の改正で、遺族基礎年金の終了から5年経つと、遺族厚生年金の受給が終了することになる点は注意が必要です。

 

5年有期給付になる改正は約20年かけて段階的に実施

遺族厚生年金の受給期間が5年となる改正案は、2028年4月から段階的に実施される予定です。

2028年度時点で40歳以上の人は無期給付のままで、40歳未満の人は5年有期が適用されることになるのですが、そもそも30歳未満の人は今の制度でも5年有期です。つまり、今回の改正で悪い方向の影響を受ける対象者は、現在30歳~37歳(生年月日によって少しずれますが)の女性ということになります。

なお、これまで遺族厚生年金がもらえなかった男性については改正案が施行されたら、年齢を問わずすみやかに5年間の受給が開始となります。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
(出典元:厚生労働省サイト「遺族厚生年金の見直しについて」より)

ちなみに、5年有期の施行と同時に配偶者が受け取る年金額が増える予定です。

現行制度の遺族厚生年金の金額は「死亡した夫または妻の厚生年金の4分の3」ですが、「有期給付加算(仮称)」として、死亡した夫または妻の厚生年金の4分の1が加算されることになります。

 

その他の遺族年金受給に関する変更点

今回の改正で遺族厚生年金を受給する際の収入要件が撤廃されます。

 

もともと、年収850万円未満という収入要件だったので、収入によって受給できないという人は少なかったのですが、世の中の給与水準が上がっていることや、今後は統計的に所得の多い男性が受給するケースが拡大することもあるため、収入要件廃止は現実的な対応ではないでしょうか。

 

また、残された夫または妻が65歳から受け取る老齢厚生年金に「死亡時分割(仮称)」という仕組みが新たに導入されます。これは、亡くなった人の厚生年金記録を分割し、配偶者の記録に上乗せするという仕組みで、これによって残された夫または妻の将来の老齢厚生年金が増加することになります。離婚時の年金分割と同じ考え方が取り入れられるのです。

 

なお、60歳未満の人が受け取る遺族厚生年金は原則5年間の有期給付となりますが、支給終了後に十分な生活再建ができていないとされる人は、引き続き遺族厚生年金を受給できるという配慮措置も設けられています。

 

制度の改正点は正しく理解しておきたいものですね。

 

 

一般社団法人日本定年力検定協会
代表理事 栗本大介(CFP®認定者/1級FP技能士)

 

 

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